2012年3月16日金曜日

君が代条例とナチスの反タバコ運動

橋下君がツイッターで君が代斉唱問題について論じている。

ことの発端は、大阪府立高校の卒業式で、教員がちゃんと君が代を斉唱しているかどうか、教頭が教員の口元の動きをチェックし、動いていなかった3人を校長が校長室に呼んだという問題だ。
橋下市長は「これが服務規律を徹底するマネジメント」と校長の対応を絶賛した。
だが、賛否両論が渦巻いている。

橋下君の主張はこうだ。

君が代の起立斉唱を命じ、その状況報告を求めたのは教育委員会だ。
口元をチェックしないで、どうやって斉唱を確認するのか。
校長は間違っていない。おかしいとすれば、それを命じた教育委員会だ。
教育委員会の命令を守らせるために、全国初の君が代条例を制定した。

おっしゃる通り。
理屈としては正しい。
筋が通っている。

でも、「そこまでやるか」という気持ちの悪さが残る。

たとえば軽犯罪法は
「街路でタンつばを吐き、または小便をした者は、拘留または科料に処する」
と定めている。
サラリーマンが道ばたでカーッペッとやったとき、建物の陰でこれを監視していた警察官がつかつかとやってきて、「軽犯罪法違反です。署までご同行願います」とやったらどうだろう。

もし橋下君が首相になっていたら、ぶら下がり取材でこう言うのだろう。

タンつばを禁じ、拘留に処すると決めているのは軽犯罪法だ。
街頭を歩く人を監視しないで、どうやって違法行為を確認するのか。
警察官は間違っていない。
おかしいとすれば、軽犯罪法を決めた国会であり、国会議員を選んだ国民だ。

おっしゃる通り。
理屈としては正しい。
でも、これでいいのか。

軽犯罪法だって、第四条で「この法律の適用にあたっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意」することを求めている。
要は運用の問題。さじ加減ってことだ。

橋下君の組織マネジメントの厳格さで思い出したことがある。

大阪府知事になったばかりのころ、最初に手がけたのが大阪府庁舎の全面禁煙だった。
喫煙室を撤廃するだけでなく、喫煙のための休息時間を定めた条例も改正した。
当然職員からは不満の声があがったが、勤務時間にタバコを吸うことは胸を張って主張できる権利ではない。「勤務時間は職務に専念せよ」というのはもっともだ。

ただ、ある野党議員がこうつぶやいた。
「ヒトラーも最初にやったのは禁煙運動だった」

本当?と思ってウィキペディアを調べたら、あった。
「ナチス・ドイツの反タバコ運動」
ドイツ人医師が初めて喫煙と肺がんの関連性を確認してから、ナチス・ドイツ政権が喫煙に対する反対運動を開始した、とある。これが近代における最初の禁煙キャンペーンと言われるそうだ。

国民の健康を守るため、肺がんになるタバコを禁じる。

理屈としては正しいのかもしれない。
でもなあ。そこまでやるか。

橋下君とナチス。

世間の不安感を裏打ちするようで、怖い。

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